工業用クロムめっきとは、「ハードクロムめっき」「硬質クロムメめっき」「HCr」「ICr」と呼ばれ、膜厚が薄い場合「フラッシュめっき」「ミクロンめっき」とも呼ばれます。
JISでは膜厚2μ以上・硬さをHV750以上と定めています。耐摩耗性・耐食性・潤滑性に優れています。
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弊社では、工業用クロムめっき(ハードクロムめっき・硬質クロムめっき)のみを半世紀にわたり扱っております。 |
HV800~1000(20μ)(HRC65~69相当)で電気めっきの中では最も硬いめっき処理です。
「硬度早見表」(PDFファイル)で他の表面処理及び素材、焼き入れ硬さとの比較をご覧ください。
ハードクロムめっき(硬質クロムめっき)は摩耗係数が少なく耐摩耗性に極めて優れています。ハードクロムめっき(硬質クロムめっき)に要求される最も重要な基本的な性質です。ただし、ハードクロムめっき(硬質クロムめっき)同士で摺動しますと、逆にかじり現象が発生し摩耗を早めるので注意が必要です。
ハードクロムめっき(硬質クロムめっき)は潤滑性にも優れています。摩擦相手と凝着しづらく、摩擦係数が低い性質を持っています。
金属同士が結合し、合金化していますので簡単にはがれる事はありません。ただし、めっき前の品物に酸化皮膜・油などがありますと密着性が悪く、剥離やビリの原因となってしまいます。
※酸化皮膜とは、おもに錆や焼入れの黒皮・放電面・ワイヤーカット面・ちっか膜など。
塩化物以外の化学薬品に対して安定しています。
膜厚が薄いと格子状組織のクラックが素地にまで達していますので、湿気の多いところで使用したりすると耐食性が落ちることもあります。
ハードクロムめっき(硬質クロムめっき)は、非磁性です。
55℃~60℃前後です。処理による素地の変形はありません。
200℃~400℃までは徐々に被膜硬度が減少し、400℃以上で急激に減少します。
水素が素地(ワーク)の結晶組織中に原子状の水素として浸透拡散し、水素の圧力のため素地(ワーク)の柔軟性が低下し脆くなること。
熱処理によって水素の放出をさせる方法。 一般的な熱処理条件は、めっき後4時間以内190℃~200℃、2時間以上とされている。
水素0.03~0.1% 酸素0.2~0.5 残りがクロムです。
主に2通りあります。
1.化学的方法 塩酸(Hcl30vol=30%)の希釈液に浸漬けして行います。
2.電気化学的方法 苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)に浸漬し、陽極で電解します。
(剥離…めっきを剥がすこと)
※ベーキング処理は弊社で対応しておりません。
クロムめっきと硬質クロムめっき、2つの大きな違いは用途です。
クロムめっきは、素材下地に銅-ニッケル(10μ程度)を付けた後に極薄いクロムめっき(0.1μ程度)を施すめっき処理でパイプ椅子や自動車用バンパー等に使用されており、装飾めっきと呼ばれたりします。
硬質クロムめっきは、直接素材にクロムめっきの被膜を生成する処理になり、金属クロムの硬さと滑りの良さを利用してシリンダー他、金型・ロール等の摺動部や可動部の部品に多く採用されています。
硬質クロムめっきは、耐摩耗を目的として使用する事が多く一定の膜厚を多く付けたり、一部分のみに処理をするために、処理時間が掛ったり、処理のノウハウが必須となるのでコストは高価な処理になります。
一方、クロムめっきは、下地にニッケルを厚付けしているため、耐食性に優れています。
外観と耐食性を重視するならコスト的に安価なクロムめっきが良いと思われます。
めっきの種類 | 特徴 |
---|---|
銅-ニッケル-クロム | 装飾クロムめっきと総称されるめっきで、金属素材、プラスチック素材を問わず装飾めっきの主流をなしている。クロムめっきのもつ重厚な金属質感、清潔感、精緻さと相まって、あらゆる分野で広く利用されている。 |
プラスチックめっき | めっき種類別の分類ではないが、装飾めっきの中で大きな比重を占めているめっきであり、プラスチック時代に不可決のメタライジング技術でもある。 |
金めっき | 金めっきは、産出量の少ない金を最大限有効に活用する方法として、古代より馬具、刀剣、仏像・仏具、装身具に活用され、現代においても装身具、喫煙具、照明器具、眼鏡フレーム、時計、袋物金具、食器、仏具等に不可欠のめっき法として高く評価されている。 |
銀めっき | 銀のもつ独特の色調は古来より尊ばれ、金とならんで装飾品全般に活用されてきた。今日でも、装身具、食器、喫煙具、バッヂ、メタル、楽器等に光沢銀めっきが利用されている。 |
ロジウムめっき | ロジウムめっきは化学的に安定で、常温で変色することがないため、銀めっきの変色防止用にうってつけである。装飾品や美術工芸品、楽器などに活用されている。とくに、時計側やライター、眼鏡フレームへの利用では、その特性が十二分に発揮される。 |
パラジウムめっき | 耐食性は白金やロジウムほどすぐれてはいないが、貴金属の中では安価であるため、近年徐々に利用されるようになってきた。白金やロジウム同様、白色光沢外観を有している。 |
白金めっき | ロジウムほど多方面で利用されているわけではないが、耐食性や耐変色性、硬度等の点でロジウムと似た性質を有しており、重厚な外観と共に、高級な装飾品関連に利用されている。 |
黒色クロムめっき | 漆黒調の皮膜が得られる代表的なめっきである。高級カメラの上蓋(グンカン部)やエプロン、底部、あるいは自動車やオートバイの各部品に広く利用されているほか、弱電部品や通信機部品(放熱効果を目的としたシールドケース等)、時計側、事務機等に活用されている。 |
亜鉛めっき (黒色クロメート) |
光沢亜鉛めっき後に、銀塩を含有した浴中に浸漬して得られる黒色クロメート皮膜は、耐食性が良好であるため、外観向上、すなわち付加価値向上の目的と共に、自動車や弱電などのボルト、ナット、各種金具類(内装品)等に利用されている。高級洋傘の骨に利用されている例もある。 |
黒色ニッケルめっき | めっき直後の皮膜は脆くて光沢がないため、一般的には膜厚2μm以下でラッカー仕上げをしたものが精密光学機器の内装品等に利用されている。 |
黒色ロジウムめっき | 比較的新しいめっき法で、耐食性にすぐれ、重厚な色調と相まって、眼鏡フレームや時計側、喫煙具等に利用されるようになっている。 |
※弊社では硬質(ハード)クロムめっき処理のみ対応しております。
お客様のご要望に応じて、バフ研磨が可能です。
めっき前の素地調整、機械加工時のキズやバリの除去、めっき後の仕上げ(艶出し)など。
大きさや重量・精度が厳しいバフ研磨については対応出来ない場合もございますのでお問い合わせください。
この規格は、電気めっき(1)(以下、めっきという。)の記号による表示方法について規 定する。 注(1)自己触媒型の無電解めっきを含む。
この規格で用いる主な用語の意味は、JIS H 0400(電気めっき用語)によるほかは、次による。
めっきに用いる金属及び合金の種類によって分類されるめっき。
例:銅めっき、ニッケルめっき、クロムめっき。
多層めっきを組み立てている一連のめっきの種類の順序。
例:鉄鋼素地又は亜鉛合金素地上の銅・ニッケル・クロム系のめっき。
同一種類のめっきにおいて、性質、形態、方法などを異にするめっき。
例1:ニッケルめっきにおいて、光沢剤を添加した浴から析出された硫黄を含む光沢ニッケルめっき。
例2:平滑剤を添加した浴から析出された硫黄を含まない半光沢ニッケルめっき。
めっきに続いて行われる処理。特にこの規格で規定する後処理とは、めっきに直接関係する処理に限定する。
例:腐食性の強い屋外雰囲気、通常の屋内雰囲気。
装飾・防食などのめっきにおいて、メッキを施した製品が使用される環境で、直接又は間接にその製品に影響を及ぼす周囲の雰囲気。
例:腐食性の強い屋外雰囲気、通常の屋内雰囲気。
めっきの記号による表示方法は、4.に規定する記号を用い、(1)に示す順序による。 ただし、当分の間、(2)に示す順序によってもよい。 なお、特に表示の必要がない記号は、省略してもよい。
注(2) | 電気めっき又は無電解めっきを表す記号。ただし、電気めっきと無電解めっきとによってめっき層が構成されている場合には、最終めっきを表す記号。 |
(3) | ハイフン |
(4) | 斜線 |
(5) | 多層めっきの場合には、素地に近いめっきの構成の順に左から右へコンマを付けて順に表示する。電気めっきと無電解めっきとによって構成されている場合で、注(2)の記号と異なるめっきでは、 めっきの記号の前にそれを表す記号をハイフンを付けて表示する。 |
(6) | コロン |
(電気めっき、鉄鋼素地、銅めっき20μm以上、光沢ニッケルめっき25μm以上、普通クロムめっき0.1μm以上、腐食性の強い屋外での使用)
(電気めっき、鉄鋼素地、亜鉛めっき15μm以上、有色クロメート処理、通常の屋外での使用)
(電気めっき、銅合金素地、光沢ニッケルめっき5μm以上、普通クロムめっき0.1μm以上、通常の屋内での使用)
(最終めっきが電気めっき、鉄鋼素地、無電解ニッケルめっき15μm以上、工業用クロムめっき20μm以上)
(電気めっき、アルミニウム合金素地、銅めっき10μm以上、光沢ニッケルめっき10μm以上、普通クロムめっき0.1μm以上、通常の屋内での使用)
注(7) | めっきの厚さによる等級を表す記号[4.(3)による。] |
(電気めっき、鉄鋼素地、亜鉛めっき2級、有色クロメート、湿度の高い屋内での使用)
(電気めっき、銅合金素地、ニッケル・クロム系めっき3級、通常の屋外での使用)
電気めっきを表す記号は、Ep又はSPLEとする。ただし、無電解めっきを表す記号は、ELp又はSPLELとする。
素地の種類を表す記号は、素地が金属の場合には、その金属の元素記号とし、合金の場合には主成分金属の元素記号とする。
例1:鉄、鋼及びそれらの合金 | Fe |
例2:銅及びその合金 | Cu |
例3:亜鉛及びその合金 | Zn |
例4:アルミニウム及びのそ合金 | Al |
例5:マグネシウム及びその合金 | Mg |
また、素地がプラスチックの場合には、PL、素地がセラミックスの場合にはCEとする。 なお、素地について材質、熱処理及び加工条件を示す必要がある場合には、素地記号に *1印を付け、注として各材料についての日本工業規格に定められた材質記号、及び JIS B 0122(加工方法記号)に定められた加工記号及び条件を付記する。
注*1 めっきに先立ち素地黄銅にヘアライン加工を施すこと。 (ヘアライン加工した黄銅素地、光沢ニッケルめっき5μm以上、普通クロムめっき 0.1μm以上)
注*1 SUS304ステンレス鋼
(ステンレス鋼素地、金めっき2μm以上)
注*1 ABS樹脂
(ABS樹脂素地、光沢銅めっき10μm以上、二層ニッケルめっき15μm以上、マイクロポーラスクロムめっき0.1μm以上)
めっきの種類を表す記号は、その元素記号による。合金めっきの場合には、合金を構成
している主な元素の元素記号をハイフンで結ぶ。
なお、特に主要な合金元素の組成を示す場合には、その質量パーセントの数値を、元素記号の次に( )を付けて示すことができる。
また、工業用クロムめっき、工業用金めっき、装飾用金めっきなどについては、それぞれの日本工業規格で定められた記号を元素記号の前に付けることができる。さらに、特殊な使用目的については、*2印を付け、注として付記する。
(銅めっき10μm以上、半光沢ニッケルめっき10μm以上、普通クロムめっき0.1μm以上)
(亜鉛-ニッケル合金めっき10μm以上)
(金75%-銅合金(18K)めっき5μm以上)
(銅10μm以上、光沢ニッケル5μm以上、すず-コバルト合金めっき0.1μm以上)
(工業用クロムめっき50μm以上)
(工業用金めっき2μm以上)
めっき厚さは、有効面での最少厚さをμm単位で示した数字とする。
(銅めっき10μm以上、二層ニッケルめっき15μm以上、マイクロポーラスクロムめっき0.1μm以上)
めっきの規格で、めっき厚さによる等級分けを行っている場合には、等級分けによってめっき記号及び厚さを示す。
等級 | 記号 | Ni又はCu+Niの厚さ μm |
1 級 | Ep-Fe/Ni[1]/ | 3 以上 |
2 級 | Ep-Fe/Ni[2]/ | 5 以上 |
3 級 | Ep-Fe/Ni[3]/1 | 10 以上 |
めっきのタイプ及びその記号は、表1のとおりとする。このほか特殊なタイプについては、*3印を付け、注として付記する。
めっきのタイプ | 記号 | 参考(めっきの種類) |
光沢めっき | b | 銅めっき、ニッケルめっき、 クロムめっき、金めっき、 銀めっき、合金めっきなど |
半光沢めっき | s | |
ビロード状めっき | v | |
非平滑めっき | n | |
無光沢めっき | m | |
複合めっき | cp | |
黒色めっき | bk | |
一層めっき | d | ニッケルめっきなど |
三層めっき | t | |
普通めっき | r | クロムめっき |
マイクロポーラスめっき | mp | |
マイクロクラックめっき | mc | |
クラックフリーめっき | cf |
(光沢銅めっき10μm以上、三層ニッケルめっき20μm以上、マイクロクラッククロムめっき0.5μm以上)
後処理を表す記号は、表2のとおりとする。
2種類以上の後処理を行う場合には、処理操作の順又は素地に近い順に左から右に各記号をコンマで区切って示す。
なお、処理条件を示す場合及び表2以外の特殊な後処理を示す場合には、*4印を付け、注として付記する。
後処理 | 記号 |
水素除去のベーキング | HB |
拡散熱処理 | DH |
光沢クロメート処理 | CM1 |
有色クロメート処理 | CM2 |
塗 装 | PA |
着 色 | CL |
変色防止処理 | AT |
注*1 めっきに先立ち素地鋼鉄はHAR(応力除去焼きなまし)を施すこと。
注*4 透明ウレタン塗装仕上げを施すこと。
(鉄鋼素地、熱処理、亜鉛めっき10μm以上、ベーキング、光沢クロメート処理、塗装)
塗装、防食などの目的でめっき製品を使用する場合は、その使用環境を表3のとおりに区分し、記号で示す。
これ以外の特殊な環境での使用に対しては、*5印を付け、注として付記する。
使用環境 | 使用環境条件 | 記号 | 参 考 |
A | 腐食性の強い屋外環境 | A | 海浜、工業地域など |
B | 通常の屋外環境 | B | |
C | 湿度の高い屋内環境 | C | |
D | 通常の屋内環境 | D |
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